長期優良住宅をくわしく知る ②耐震等級編

『長期優良住宅をくわしく知る』の第2回目は「耐震等級」に関して掘り下げていきたいと思います。

地震に対する強さの指標となる耐震等級を正しく理解していきましょう。

目次

1. 耐震等級とは

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それでは、そもそも耐震等級とは何でしょうか?

耐震等級は住宅性能表示の一つで、建物の強度を示す指標になります。2000年に品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づき制定されました。

簡単に言ってしまうと、住宅がどれくらい大きい地震に耐えられるかを3段階に分けたものさしというイメージです。

2024年の年始に発生した能登半島地震や、発生を予想されている南海トラフ地震など、大地震の話題を耳にすると「うちの家は大丈夫だろうか?」と不安になる方も多いと思います。

お住まいの耐震等級を調べる場合、住宅性能評価書に耐震等級が記載されております。

ただ、書類の作成に別途費用が発生することが多いためお家を建てる際に作成を希望されていない場合、お手元にないかもしれません。

どうしても、耐震等級を知りたい場合はお家を建てた工務店・ハウスメーカーにご相談ください。等級だけであれば教えてもらえるかもしれません。

どうしてもわからない場合は、建築時期で判断できます。1981年6月1日以降に建築確認を受けているお家の場合、新耐震基準により耐震等級1以上は最低限保証されています。

2. 耐震性の計算方法

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2016年に起きた最大震度7の熊本地震では、耐震等級1の住宅はもちろん、耐震性に優れているとされている耐震等級2で建てられた住宅でも一部、半壊しました。しかし、許容応力度計算による耐震等級3のお家は一棟も倒壊しませんでした。

さて、この耐震等級ですが耐震性の計算方法が3種類あるのをご存じですか?

耐震性の計算方法は、以下の3つとなり

1.建築基準法の仕様規定

2.品確法における性能表示計算

3.建築基準法の許容応力度計算

多くの住宅は1.建築基準法の仕様規定で計算されています。

それぞれどう違うのか詳しく見ていきましょう。

2-1. 建築基準法の仕様規定

仕様規定は壁量計算・四分割法・N値計算といった簡易的な計算方法で行われます。

決められた仕様にのっとり、最低限の計算で設計が可能なので作る側としては負担が少なく、多くの木造住宅はこの仕様規定で設計されています。

詳細な構造計算はされておりませんが、新耐震基準は満たされているため大きな地震が来たらすぐに倒壊するということはありません。


他の計算方法との違い

仕様規定での設計は、定められた最低限の耐力壁があればよく建築基準法におけるもっとも低い耐震性能です。

言い換えれば、大きな地震が来た時にギリギリ倒壊しないレベルであって、その後補修を行なって住み続けられるかに関しては重きを置いておりません。

壁量計算のほかに、壁の配置・バランスや接合部のチェックなどをありますが、いずれも簡易的です。

また、構造計算では鉛直荷重・地震荷重・風荷重などを算出しますが、仕様規定ではそれらを大雑把に分類し、仮定の数値で計算します。

そのため厳密な計算を行う建築基準法の許容応力度計算と比べると、かなり簡易的な計算と言わざるを得ません。

なお、仕様規定では耐震等級1しかありません。お住まいのお家が、この計算方法で耐震等級2または3と言われた場合、公的に認められたものではない「耐震等級2または3相当」だと思われます。

2-2. 品確法における性能表示計算

性能表示計算は、品確法(住宅品質確保促進法)の規定に従って計算される方法です。

仕様規定でのチェック項目に加え、床・屋根倍率の確認、床倍率に応じた横架材接合部の倍率もチェックします。

性能表示計算によって建てられたお家は、耐震等級2以上が保証されます。耐震等級2以上としているハウスメーカーや工務店は、性能表示計算を用いていることが多いです。

2-3. 建築基準法の許容応力度計算

許容応力度計算は、耐震性を計算する際に最も優れた計算方法です。

性能表示計算でチェックした項目をさらに細かく計算します。性能表示計算との違いは、わかりやすいところだと耐力壁の必要量が増えます。

柱や梁などお家を構成する部材全ての応力を計算するので、その分時間やコストはかかります。しかし、最高レベルの地震対策を行うのであれば許容応力度計算は欠かせません。

3. 計算方法が違っても、耐震等級は同じ?

先ほど耐震等級は1~3まであると書きましたが、

2. 品確法における性能表示計算で算出された耐震等級2・3と

3. 建築基準法の許容応力度計算で算出された耐震等級2・3は

はたして同じ強さなのでしょうか?

 

正解は『 No 』です。

 

等級数が同じであっても、実際の耐震性は、

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となります。

また、ざっくりした比較になりますが

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といったイメージです。

ですので、等級数だけ見れば同じ値に見えますが許容応力度計算による耐震等級3が一番耐震性が強く、性能表示計算による耐震等級3であっても、許容応力度計算によれば2相当であるということです。

建売やハウスメーカーなどで「耐震等級3」の表示があってもどの計算方法で算出された耐震等級であるか注意が必要です。

4. 長期優良住宅と耐震等級

最後にこの耐震等級が長期優良住宅とどう関係あるかですが、長期優良住宅の認定を受けるには、令和4年10月以降は耐震等級3が必要になります。

現状では、計算方法の指定はなく許容応力度計算による耐震等級3か、性能表示計算による耐震等級3を取得できれば、認定の条件はクリアです。

ただ、2022年の通常国会で「建築基準法の一部を改正する法律案」が可決され、2025年には許容応力度計算が義務化される可能性があるためそうなった場合は、耐震等級は一本化される方向になると思われます。

タカハシのお家は許容応力度計算を行なって建てておりますので、何も問題はありませんが、今後許容応力度計算が義務付けられれば地震に強い家が増え、災害時により多くの人命や生活を守れる可能性がアップするのでこの流れには期待しております。

みなさんも耐震等級を正しく理解して、万が一の時であっても命を守れる安心な家づくりをしていきましょう。

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